緩和ケアと聞くと、癌患者に対するものが真っ先に思い浮かぶ。
だが、息子のように先天性心疾患患者にもその時は訪れるし慢性心不全でしんどくなっていく状態に対してだって緩和ケアがあって然るべきだと私は思っている。
だが今まで、先天性心疾患(というか慢性心不全というか)の患者に対する緩和ケアというものを聞いたことがなかった。
ずっとずっと主治医に聞きたいと思っていたのだが、息子もいつも外来診療で一緒なので聞けないままだった。
だが4歳の頃から息子に施されている治療は既に『治療』というよりは『残された時間のQOLを可能な限り維持してあげる』というものなのだ。
その時点で緩和ケアに入っているのかもしれないが、今よりももっと心不全が進行すると本当に動けなくなったり今より浮腫がひどくなったり多臓器不全になる手前で痛みを伴ったりというのも出てくるはずだ。
そういった時、在宅のまま訪問診療で痛みのコントロールのための点滴を入れてもらったりということを私はして欲しいと思っている。
もちろん、元気にしていたと思ったら発作が突然発生して即心停止ということもあり得る病気ではあるので必ず緩和ケアのパターンになるとは限らないが。
ただ、日本における小児の緩和ケアというとやはり小児がんに対して行われていて心疾患児の慢性心不全に対する緩和ケアというのがほとんど実施もされず準備のための行動や話し合いもされていないというのが現状のようだ。論文によると。
私は絶対におうちで看取りたいと思っているので、こちらに関しても少しずつ情報を集めて準備をしていく。
ベッドの上しか活動範囲がなく、トイレやシャワーを使うのにも気を遣い無機質な冷たい壁やカーテン、モニター音に囲まれた自由のない病院では絶対に最期を迎えさせたくないのだ。
『僕のお部屋はとっても素敵!』と息子が言う、お気に入りで溢れた自分の部屋で最期の最期まで楽しい気持ちで大好きなパパとママの温もりを感じて安心した状態でいさせてあげたいと思っている。
3歳半までの間に10時間を超える手術だけでも4回以上、他の手術や治療を含めると数えきれないほど頑張って心身の痛みを耐え抜いてきた息子。
周りの先天性心疾患の子たちが順調に手術を終え元気になって外で走り回っている中、頑張っても頑張っても苦しく痛いだけでそこに手が届くことが叶わなかった息子。
親の決定権だけで幼い息子にただただ辛い思いをさせてしまった事に後悔と申し訳なさしかなく、『この手術頑張ったら元気になれるからね、ママ待ってるからね』と結果的には嘘をついてしまったことに対する贖罪の気持ちは一生消えることはない。
もちろん先生たちも全力は尽くしてくれたから心から感謝はしているが、術後激痛に苦しみICU面会時間制限により夜間は大好きなママから引き離されたった1人恐怖の時間(最悪な看護師が夜間担当になると冗談抜きで雑な管理対応をされていたが、下手にクレームを入れると他のスタッフから見えないところで息子の命奪われると思っていて言えなかった)を過ごす精神的にもつらい状況を長期に渡り強いられたのは幼い息子なのだ。
そんな中でも常に笑顔を振り撒いていた心優しい息子に、もうこれ以上は何事に対しても苦しくて辛い思いはさせたくないというのが夫婦共通の想いだ。