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気管切開児名物・吸引祭りと、貞子

NomadismLife

気管切開をしている子供、略して気切(きせつ)っ子。

気切っ子名物といえばやはり吸引祭りだろう。

何を吸引するのかと言うと、痰(たん)である。

声帯がうまく機能せずに痰が気管に流れ込んできたり、気管切開孔に留置している気管カニューレという器具が刺激となって痰がでる。

その痰の量が普段以上に多くなり頻回な吸引が必要となる状態、それが「吸引祭り」なのだ。

痰吸引は、だいたい以下のような手順で行われる。

病院によって教わる方法が微妙に違うが、親御さんたちはネットや友達同士など色んな情報をゲットしながらそのうち「My吸引法」を確立してゆく。

  • 吸引カテーテルを袋から出す。もしくは保管している容器から出す。
  • 吸引カテーテルの先端をアルコール綿で消毒する。
  • 気管切開孔(厳密には、気管カニューレの口)からカテーテルを挿入させて痰を吸い出す。
  • カテーテル内にたまった痰をキレイにするため、水を吸引する。
  • 必要であれば再度カテーテル先端をアルコール綿で消毒してから痰を吸引する。
  • 水を吸引する。
  • カテーテルをアルコール消毒して保管容器に戻す(病院であれば1回ごとに使い捨てることも多い)。

痰の吸引をしないとどうなるのだろうか。

窒息死である。

そう。命がガチでかかっている医療的ケア。それが痰吸引。

ついでに言うと、気管カニューレがイヤで器用に自ら取ってしまうツワモノ気切っ子たちもいる。

長期レベルで気管切開孔が空いていたりしない限り、気管切開孔は本当にすぐに閉じてしまう。

つまり、窒息してしまう。

別記事で詳細を書くつもりだが、息子トラが気管切開孔を閉じた時はお昼12時頃に外来で気管カニューレをヒョイっと抜かれて鼻と口からの呼吸で問題ないことを確認されたあとガーゼをあてがわれた。

↓↓トラが気管切開をすることになった理由を書いた記事はコレ。

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息子トラが気管切開することになった理由

続きを見る

その後みるみるうちに孔が小さくなっていき、その日の夕方17時ころに医師診察で見た時にはもう完全にふさがってしまっていた。

自らカニューレ抜去を試みるツワモノ気切っ子の親御さんたちは本当に苦労が耐えないと思う。

吸引だけでも体力メンタルどっちもイッパイッパイなのに「いやマジなにしてくれてんねん。」という感覚だろう。

3歳半で気切っ子の仲間入りを果たした息子トラ、思いがけずありがたいことに8歳で気管切開孔を閉じるまでの約4年間・・・

大のお祭り男だった。

「吸引祭り」などとおちゃらけているが、これほどまでに命と隣り合わせの祭りがこの世に存在するだろうか。

眠れぬ過酷さ・・・どのタイミングで吸引が必要になるか分からないためおちおち眠れぬゆえの吸引者(主に片親に負担)の命。

それが何日も続くのだ。

完全にブラック企業である。

そして吸引者(主に片親に負担)が寝落ちして吸引ができなければ、我が子が窒息するのだ。

この重すぎる責任と眠れぬ身体の疲れとに押し潰されそうになりながら、多くの気切っ子の親は祭りに挑んでいる。

吸引祭りはだいたい体調不良の時や湿度の高いときに訪れる。

「え?この地域のどこにこんなヤンキーおった?」っていうくらい、祭りになるとどこからかワラワラと痰が出現する。

祭りが始まると完徹(完全徹夜)決定だ。

祭りが開催されないときであっても、息子トラは痰が多かったため2時間に1回は夜間吸引があった。

日中の吸引は数十分に1回ほどと、もっと多かった。

年中お祭り男やないかい。手越くんか。

お祭りがはじまると、こちらのテンションも上げていかなくてはならない。

普段どおりのテンションだと「あーーーーー!ねみぃ!!!疲れとるのに!」「マジなんなん吸引!」と、イライラしてしまうのだ。

そのイライラがどこへ向かうかというと目の前の我が子なのである。

自分の意志とは無関係に勝手に喉に穴あけられて器具つっこまれて、つらい吸引もやられて声まで奪われて。

外出しようもんなら知らん子供たちにジロジロ見られコソコソ何かを言われ、その親からは「ジロジロ見ちゃダメ」みたいな素振りで対応される。

いちばんツラいのは息子トラなのに、いちばん頑張ってるのに、私のメンタルキャパシティの貧しさゆえに八つ当たりされるなんてあんまりじゃないか。

申し訳なさそうに吸引されるトラの表情を見ては何度も謝り何度も罪悪感に苛まれ、それでも誰にも物理的助けを求められず(夫マスオは基本的にノータッチ)。

そこで私が編み出したのが、テンションを爆上げさせて楽しむ方法、

パーティーピーポースタイルである。

私たちは自らの意思でカラオケオールを楽しみ、自らの意思でクラブで踊り狂い、そして死んだ魚の目をしながら始発で家に帰る。

だいたい朝4時ころまではめちゃくちゃ元気なのだ。

もうすぐ40歳になろうというアラフォーの今でもそれは変わらない。

こうして遊んでいる時の私たちは、イライラしているだろうか。

いや、めちゃくちゃ元気に踊り狂いテキーラを煽っている。

いい歳してカラオケのソファの上に立ち、合いの手を入れて大笑いし

目にも留まらぬ速さで自分が歌う曲の予約をちゃっかり入れ、また合いの手に戻る。

同じオールなのになぜ吸引ではイライラするのか。

やりたくもないし楽しくもないことだからである。

やりたくないが自分がやらねば我が子が召されてしまう。

この子が気切っ子じゃなければたくさん眠れるのに・・・などと、タラレバを考えて目の前の現実に不満を抱くからである。

この子が生きてくれてさえいれば・・・そんな気持ちでオペをお願いしたのに、生きてくれていること・毎日一緒にいられることに心から感謝しているのに、なにより我が子のことが大好きでたまらないのに不満がでてしまう。

そんな自分がイヤでたまらなくなる。

眠れないというのは、ウツにも繋がりかねない大変な状態だ。

カラオケオールやクラブオールのように家に帰ればぐっすり眠れると分かっている上での徹夜でもないし、そもそも遊びではない。

会社勤めのように、自分がいなくても会社は回っていくという代物でもない。

寝落ちのミスで命が消えるかもしれないのだ。

そして仕事ではないので当たり前だが給料もでない。

遊びのオールや仕事と同じ感覚ではいられない。

だがしかし、テンションを上げてアドレナリンを大放出させないことにはイライラしてしまうのだ。

この際、遊びとは違うとかウダウダ考えてネチネチ悩む暇などない。

時間の無駄だ。

少なくとも私はそういう結論に達した。

それからというもの、吸引祭りの狼煙(のろし)があがったことが分かると私の脳内では「レッツパーリナーイ!!!!」

と、DJケオリがチェケラしはじめるようになった。

ちなみにDJケオリはこの人である。

『DJケオリィィィィ!』と、今でも友人と叫んで盛り上がるほど。

この世界ではかなりの有名人だ。

夜間吸引の何がつらいかって、横になった身体を・ウトウトと眠りかけた脳を起こさなくてはならないという状態を何度も繰り返すことなのだ。

そうやって夜中に何度も身体を起き上がらせる姿を私はこう呼んでいた。

貞子。

私が貞子からDJケオリになるにはどうしたら良いか。

どうしたらパーリナィを継続できるか。

そう。

ずっと身体を起こしておくのである。

私は部屋を豆電球にしたまま息子トラの枕元でずっと立て膝をついていた。

右手にはカテーテル、左手にはアルコール綿。

もはや、寝首をかこうとしているただのヤマンバの様相である。

(いつでも来いよオラァ!)

ヤマンバはワラワラと現れたヤンキーたちに啖呵を切っていた。

ただ、今だったら左手は静かにスマホもってネット漫画を見続けるかもしれない。

当時は幼稚園入園を断られたり、特別支援学校も何校かに進学拒否されたりとツラいことも続きアドレナリンを出さなくてはやってられなかったんだと思う。

たとえ貞子でもヤマンバでも、たとえパーティーピーポーであっても、たまにヤンキー化しても、よく乗り切ったよ私はと自分を褒めてあげたい。

夫マスオはというと。

休日であってもヤツに任せておくと痰の音にすら気づかず爆睡し続け結果的にトラが100%天に召されてしまう未来が見えていたため任せることはしなかった。

どれだけ掃除機の音が大きかろうが周りで人が大声で喋っていようが眠り続ける男なのだ。

幼少期からそうだったと義両親が言っていたので今更変えることなどできないし、「子供欲しい」と私より言っていたわりに親としての責任感や父性というものがほぼない。

とはいえトラを虐待するなどは絶対にしない。

ただ、親としての・・・重い病を抱えた子供の親としての自覚がないのだ。

完全に兄と弟である。

家のことと育児は私がやる。静かな別室でたくさん寝て下さい。

休日も好きなように1人で遊んでリフレッシュしてきて下さい。

その代わりゼニを人より多く稼いでこい。

いいか?平均の3倍は稼げ。

よその家の子煩悩な旦那さんの姿をみて羨んでも仕方ない。

私がこの男(マスオ)を選んだのだ。私の選択は、私の責任だ。

こうして私たち夫婦は、自分たちが各々集中してやるべきことの振り分けをし息子トラを育ててきたのである。

夫マスオは沢山ゼニを稼ぎ息子トラが衣食住に困らず将来わたしたちが先にいなくなった時にもお金の心配をせずに生きていけるように稼ぐ。

そういう責任。

贅沢を覚えさせるとかじゃなく、ひもじい思いをさせない。お金の心配をさせない。

これも親として大切な義務だししっかりマスオはその役目を果たしているからとても立派である。

なぜかマスオを褒める文言で締めくくることになったが、貞子はそう思う。

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ダー子

重症心疾患✕軽度知的障害✕発達障害グレーのハイブリッド男児育児中。できることなら楽しくラクに人生を歩みたい。転んだらだいたい転びっぱなし。夫1人。子1人。

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