夫マスオと私は定期的に2人きりでデートをしている。
マスオから誘われることはほぼなく、私から誘う。
私の名前を呼ぶのすら恥ずかしいマスオがデートなど誘えるはずもないのだ。
夫マスオの勇気は私に告白した28歳のあの日にどうやら全て使い切ったようだ。
「ねえねえまぁくん、○日トラちゃんが学校行っとる間デートしよぉ~♡」
仕事中の夫マスオの書斎に突撃して唐突に言うのが定番の誘い方。
誘うタイミングは、完全に私の気分だ。
マリア・テレジアなのだから当然である。
あとはマスオに少し余裕がありそうな時。
「○日ね、ちょっと待ってね~。」
その場でマスオは会社の会議や打ち合わせ予定を確認し「いいよ~、有給取るね~」とスグにデートが確定する。
この余計なものが一切ないスピード感が私は大好きだ。
なかなかLINEが返ってこないなどで予定決定に数日以上要する関係は面倒である。
ちなみに夫マスオが有給を入れたとて会社の誰も夫個人の予定をいちいち見ることはしないしマスオも部のメンバーに休みのアナウンスをすることもしないので、休み中にも部下から電話はかかってくるしマスオも普通に対応している。
夫マスオが普通に勤務していると思い込んだまま部下は過ごしているのだ。
部下よ、きみの上司はいま焼肉屋でビールを飲んでいるぞ。
そこでスネて無視したりブスっとするような女々しさは私には一切ない。
ちょっぴり寂しがるフリをする小狡さは持ち合わせているが、実際のところ全く寂しくない。1ミリも寂しくない。
可愛らしく寂しがったほうがマスオがちょっと嬉しそうにするからやるだけだ。
全て計算なのだ。
むしろ仕事を優先させてほしい。
そしてたっぷり稼いでほしい。
稼いでいる男が好きなのではない。
仕事ができる男が私は大好物なのだ。
だから、マスオがまだ大して稼いでいなかった(母親が結婚に反対した理由の一つは当時のマスオの稼ぎの少なさと貯蓄額の少なさ)時でも「この人は絶対仕事ができる人だ!間違いない!」と思い惚れたのだ。
だから「仕事と私どっちが大事なの!?」などと、そもそも比較対象としておかしい質問はしたこともないししようとも思わない。
私はと言うと、「仕事と俺どっちが大事なの!?」と聞かれたら迷うことなく「は?仕事に決まっとるわ。」と答える自信がある。
そしてそんなバカバカしい質問をしてくる人とは確実に別れる。
そんなこんなで、仕事で無しになる可能性を抱えたデートを楽しんでいる。
月イチとは私の願望であって、実際にデートできるのは数ヶ月~半年に1回ほどだ。
しかも息子トラが学校に行っている間だから3時間~長くても4時間ほどと短い。
トラが体調不良で早退することもしばしばあるため、遠い場所には行けない。
学校から3駅くらいのターミナル駅周辺でお茶をしたり、暇そうな老人たちに混じってフードコートでお茶をする程度。
ゲートボール場が近くにない老人たちはフードコートに集まるようだ。
時間がちょうど合えば映画を観ることもある。
呪術廻戦0も夫マスオと観た。
もちろん私の好みだ。
夫マスオに選ばせると「本当にあった怖い話」とか宇宙人襲来系のアメリカ映画みたいのばかり選ぶ。
アメリカって、どんだけ宇宙人襲来されたら気が済むん。
夫マスオは近い未来に起こる宇宙人襲来に備えて映画で生き延びる知識を得ているらしい。
連日アマプラで宇宙人襲来系映画を探しては一生懸命観ているマスオなのだ。
途中で消すと「あっ!!消さないでよ!宇宙人襲来に備えて勉強しなきゃなのに!」とか言う。
40歳にもなって相当なバカである。
そんな40歳もデートの時は私にされるがままに恋人繋ぎで手を繋ぎ、そのまま腕も絡ませ(られ)ているので付き合って3週間の大学生さながらだ。
恋人繋ぎってホントだいすき♡
どんなに短時間でも子供抜きで夫婦2人で出かける時間を設けるのが重要だと私は思っている。
息子トラがいるとどうしても「パパとママ」になってしまう。
そしてトラは、私がマスオにくっついているとガチで怒る。
「ボクのママだよ!パパ離れてよ!ママはボクを抱きしめてよ!」
恋人か。
ただ、パパとママである前に私たちは夫婦なのだ。
一度も喧嘩したことがないしすごく仲良しだねと周りから言われるが、これからも仲良くしていたいし血がつながっていないからこそより一層気をつけなければいけないと思っている。
血がつながっていないからこそ、すぐに壊れてしまう・離れてしまう脆いものなのだ。
結婚したらなんでも分かり合えるなんて幻想だし、何を言ってもいい・なんでも許してもらえるなんてのも幻想だ。
妻または夫という立場にあぐらをかくのは危険だしパートナーに失礼だ。
お互いが好きで居続けお互いを尊敬し続けるためには、いつまでも思いやりを持ち続け努力をし続けることが大切だと思って私は生きている。
内面を磨くのは必要最低限のこと、外見もだ。
スタイル維持のために夫婦それぞれ筋トレや有酸素トレーニングを行っているし服装や髪型もちゃんと気を遣う。
夫マスオは能動的ではないが、「私の好みでいて♡」「その服もその髪型も似合う♡超かっこいい」と言いまくってるとニヤニヤしながら頑張る。
妻に気に入られたいから頑張るとか素敵ではないか。
可愛くてキュン死にしてしまう。
夫マスオが私に一目惚れしたパターンなので、結局は惚れたもん負けなのだ。
「愛されるよりも愛したいマ!ジ!で!」とか全く思わないぞキンキキッズ。
溺愛されてるほうが精神衛生的にも良い。
私は光一君派だった。
「子はかすがい」という言葉が私は大嫌いだ。
子供がいるから私たち夫婦がつながるのではない。
私たち夫婦がいるから子供がいて、私たちが仲が良いから子供も笑顔になるのだ。
誰かに強要するつもりは毛頭ないが、少なくとも私はこういう考え方だ。
夫マスオが仕事で成功しているのを見るのが心の底から嬉しいし良かったねと思うし、褒めてほしそうに給料があがった報告をしてくる構ってちゃんマスオが可愛らしいし、楽しそうに友達との遊びに行く姿を見るのも好きだ。
マスオはマスオで、私がゴキゲンにしてたり楽しそうにしてたり美味しそうにゴハンやオヤツを頬張るのを嬉しそうに見ている。
これからもお互いを思いやって尊敬し合える夫婦でいたい。
「パパとママ」ではなく1人の人間として・パートナーとして改めて意識し合うことが2人デートではできるのだ。
そうしてついでにもっと稼いでくれると更に嬉しい。