軽度知的障害と発達障害疑い(カレンダー・サヴァンだけど自閉症ではないらしいパターン)を指摘されているトラ。
指摘されているというか、何度も検査を受けているその結果だ。
カレンダー・サヴァンについては検査で発覚したわけではなく、小2か小3のころ自宅で過ごしてて「ちょっと待って。この子のカレンダー暗記力やばくない?え、なに?何で数年前の日付とその曜日を覚えてるの?」みたいな感じである。
心理発達の心理士の先生に話したら「あぁ、カレンダーボーイだねぇ。自閉症じゃないのに珍しいねぇ。」って。
息子トラは3歳半から小2の直前まで気管切開をしていて発声が一切できなかったから、なかなか・・・というか全く気付けなかった。
気管切開してから4歳頃に教えた手話(指文字)も平仮名も2週間くらいで完璧に覚えたので「この子記憶力いいなぁ」と感じてはいた。
だが私自身が幼少期から記憶力が良い娘であったため、「遺伝だな」くらいにしか思っていなかったのである。
テストは毎回徹夜暗記で高得点を取り、テストが終わった途端に全てを忘れ、そうして暗記力だけを頼りに大学まで行ったニワトリのような女が私なのだ。
言わずもがなだが、徹夜の途中で部屋の模様替えは必ずしていた。
もくじ
軽度知的障害、トラ
遺伝かと思っていたら、3歩歩けば忘れるニワトリ女である私なんかと違い長期的でかつ驚異的な記憶力を発揮しているトラ。
漢字も学校から配られたドリルを1通りやるだけで、別途漢字ノートなど書かなくてもほぼ完璧に覚える。
教科書の内容もそのまま丸暗記できてしまうので、そのままの形でテストがでれば高得点を取ってしまう。
だから、知的障害だと気づかれにくい。
だが、驚異的な単純記憶の代わりに思考系が壊滅的なのだ。
簡単な『日本むかし話』や『ぐりとぐら』のようなお話も、何度聞いても何度見ても「誰が何をする話なのか」「いま誰とだれが話している会話なのか」などが一切分からない。
なんでここでは記憶力発揮されないのか謎である。
何十回観たん?というジブリの『魔女の宅急便』や『千と千尋』なども、「誰がでてきたのか、あとで聞くでね?」と言っておかないと登場人物の名前が分からない。
いや記憶力発揮しどころやん本来。
「どんな話か」なんてのは、トラにとってはもう高難度の質問である。
1時間かけて学校文化祭の係決めについて話し合っても、クラスに戻ってきて「トラくんは何係に決まりましたか?」と聞かれても「わかりません」と答えたり、まったく違う係の名前を挙げたりする。
普通学級相当のカリキュラムで勉強中の息子トラ
息子トラは、病弱児の特別支援学校に通っている。
その名の通り、持病による病弱児であることが入学基本条件だ。
知的障害はあるが体はめっちゃ丈夫やで!という子は1人もいない。
みな病弱児なのだ。
だが病弱児でも、知的障害や発達障害をもっている子・もっていない子・肢体不自由と重度の知的障害とが重複した重症心身障害の子と様々だ。
大きく3つのパターンに分かれてクラスが存在している。
Aクラス(普通級相当のカリキュラムで勉強するクラス)・Bクラス(支援級相当のカリキュラムで勉強するクラス)・Cクラス(リハビリ等の自立活動が中心となるクラス)
トラは現在小学5年生だが、普通級相当のAクラスに在籍して年齢相応のカリキュラムで授業を受けている。
小学校1年生の頃からだ。
だが別に私が望んだことではない。
私は入学前から「この子は知的・発達の遅れが絶対にある。」と思っていた。
単なる性格や経験不足だけでは説明がつかないような遅れが見受けられたからだ。
周りには息子トラのように経験不足な病児は大勢いた。
幼稚園にも保育園にも行けず、ほぼ入院で大人としか会話していないようなお友達もいた。
だが、スムーズな意思疎通ができるのだ。
ゲームのルール理解力やコミュニケーションでの返しなど、明らかに違う。
神童を妬んで「うちの子なんて。。。」とかの思いからではない。
単なる感覚だ。
私の実家・親族はエリート思考だ。
そして実際にエリートの巣窟だ。
だから私の(母)親も私にエリート化を望んだし、私の結婚相手になる男性もそうであってほしいと望んだ。
だが私はそういう思考が大嫌いだったし、結果的に結婚した夫マスオに至ってはエリートどころか私の母親から「そんな大学名聞いたことない」と言われたレベルだ。
更に、息子トラに「掛け算なんてできなくても電卓があるぞ」と教えるようなヤツだ。
息子トラが夫マスオの教えに従い、私の計算機を引っ張り出して宿題を解いていた時は悲鳴をあげた。
百歩譲って九九は暗記してなくてもいい。
暗記のためにやっているのではなく、その定義を学んでいるのだとマスオに伝えた。
その定義を理解すれば計算機を使えばいいが、少なくとも今はそういう段階ではないし計算機を使っていいとは言われてない、とも伝えた。
つまり、「学校の勉強なんてやっても無意味だし、部下も同僚も有名大卒ばかりだけど俺のほうがよっぽど稼いでる。だから勉強なんてできなくてもいいぞ。」という男(親)だ。
ついでに言うと、夫マスオの手にかかると広島県は九州にあるし岡山県は四国にある。
最近ではYouTubeで流れていた鳥取砂丘を見て「鳥取って何県?」と聞いてきたから「鳥取県です。」と即答した。
「鳥取県なんてあるんだ!意外!」
そう返された。
アンタの脳内で仕上がってる日本地図のほうが私にとっては意外だよ。
そんな「勉強なんて、そこまでできなくても良いっスよ、最低限・適当でいいッスよ」という私たちだから、普通級相当のカリキュラムなんて別に望んでいなかったし入学前から「支援級相当じゃないですか?」と周りの人に聞いてみていたし入学後は毎年毎年「支援級に移動ってできませんか?」「知的じゃないですか?」と伝えていたのだ。
知的障害・発達障害であることにショックとか受けたこと全くないので
私も夫マスオも、息子トラが知的障害であることや何かしら発達障害であることに特別ショックを受けたことはない。
「あぁ、明らかにそんな感じはしておったしな!何をいまさら!」くらいの感じ。
ぶっちゃけそんな事よりもトラが可愛すぎていかんのだわ。
っていう。
超愛されキャラのトラは本当に甘え上手だし性格も穏やかだしいつも笑顔で明るいし、それでいてめちゃくちゃ優しくて気が利く。
ダメ押しでイケメンだ。
療育でお世話になった保育士さんや通っている病院の看護師さんから頻繁に「イケメントラちゃん」「おしゃれイケメントラちゃん」などと言われる。
ついでに自治体の福祉課のお姉さんも障害者手帳の写真を見た瞬間「あらカッコいい写真」と言っていた。
本当はブサイクだけど我が子だからよく見えるとかじゃない。
イケメンなのだ。
イケメンで優しくて気が利いていつも笑顔で心穏やかで甘え上手とか、知的障害だ発達障害だとかどうでも良くなる。
「いいのよトラちゃんはそのままでぇ~!!!!!!!アナ雪でもそんなようなこと言っとったわぁ~!」
となるだろうどんな親でも。
少なくとも私が生きてるパラレルワールドではそうだ。
アナ雪観たことないけど、大体そんな内容でしょ?
子供を自立させるのが親の義務
とはいえ、子供を自立させるのが親の義務だという親としてのポリシーが私の中にはあるから色々考え動いている。
本当はダルいからしたくない。厳しくもしたくない。
でも、私と夫マスオが息子トラより先に死んだらそれこそトラが困るのだ。
うまく生きていけなくて悲しい思いをするのはトラなのだ。
こんな可愛いイケメンのトラちゃんが切ない思いするなんて許せない!
だから心を鬼にして生きてゆく術を日々授けている。
とはいえ学校教育はそこそこでいい
だが、学校教育(勉強って意味で)はそこそこでいいという気持ちは変わらない。
冒頭でも書いたが息子トラは驚異的な記憶力の持ち主だ。
だが思考系がまったくダメだから普通カリキュラムは相当頑張って勉強してついてきたのだ。
小1で出てきた「右隣」「1つ上のマス」など、こういった簡単と思えることを理解するにも相当な時間を何十回にも及ぶ繰り返し問題を要した。
学校ではそこまで時間を割けないから、毎日3時間以上トラと私の勉強(という名の訓練)があったのだ。
「トラちゃんは経験不足なだけだから支援級ではない。そもそも知的でもない。」と言われて支援級には行かせてもらえず、必死についていくしかなかった。
トラが理解するために、色んな方向・視点から自宅で教えてそれでも理解してもらえなくてイライラしてしまうことも多かった。
そのたびにトラは泣き、泣きながら一生懸命問題を解き続けた。
なんでこんなことまでして普通カリキュラムを受けなくちゃいけないんだろう。
早く支援級にいかせてほしい。
トラを伸び伸びを過ごさせて欲しい。
最低限の知識と読み書き計算だけできれば良いのだ。
「アサガオの子葉」など知らなくても全く困らないし、「おうぎ形の面積」など大人になって一度も求めたことなどない。
「池の周りを反対方向に歩いて何分後に2人が再度出会うか計算する」など、相当な暇人でもやらない行為である。
トラは暗記力だけでなく集中力も驚異的だ。
それでいて、勉強が難しいから・できないから・分からないからといって癇癪を起こしたり投げ出したり一切しないのである。
小さい頃からそうだ。
絶対に投げ出さない。
文句も言わない。
ひたすら真面目に。
だからこそ、トラを苦しませることはしたくないのだ。
なにがあっても愛すべきトラなんだってことを伝えてきた。
怒ったり投げ出したりといった感情を出す子と違い、トラは内に想いを秘める子だ。
近くにいる人間がトラの心の動きや悩みに気付き、そっとケアしてあげる必要がある。
子供の頃の精神的な形成はその後の人生において非常に重要だと思う。
それにトラの場合、勉強の方法や努力量にミスがあって伸びないわけではない。
ちゃんと本人に合った場所で本人に合ったレベルで本人に合った支援が最も伸びるし良いのだ。
「みんなと同じ」とか「普通の」とか、本人の状態や能力を見極めず親のエゴで親の希望の枠に我が子をはめようとする行為が私は死ぬほど嫌いだ。
支援級に行けないのであれば、、、
「カリキュラムが終わらなくてもいい、無理に学年相当の内容を進めなくてもいい。前の学年の単元をやってもいいから基礎固めをお願いします」と、担任の先生には毎年伝えてきた。
トラ専用カリキュラム
1年生から4年生まで、普通級相当のカリキュラムのクラスに在籍しトラに合わせた授業を行ってきてもらった。
単純計算などの得意な単元は2時間分を1時間で進んでしまうことも多かったし、逆に思考系の単元ではかなり時間を割いたり・・・といった具合だ。
それでもやはり小学校5年生は一気に難しくなって。
国語では漢文がでてきた。
記憶力の良いトラは『春暁(しゅんぎょう)』を覚えた。
暗記の宿題など出ていないのに、音読の宿題を4回くらいこなしたところで暗記してしまっていた。
突然わたしの所へやってきて「春暁 孟浩然 春眠暁を覚えず、」などと言い出した
私は春暁の存在を覚えていたからいいが、知らん人が前触れもなくいきなり聞かされたら「どした?え?なに?大丈夫そ?」と間違いなくなる。
そうして暗記できてしまう息子トラだが、その内容説明文に関しては読んでも理解できないのだ。
トラの障害とはこういうものだ。
そしてとうとう、ストレスが外にでてきてしまった。
チック症出現
そう、チック症である。マジ最悪。
トラの場合、気管切開をしていた孔に違和感を感じてたまーに首を捻っていたものがだんだんと頻回になり運動チックへとつながった(っぽい)。
中度難聴で補聴器をつけているのだが、授業中に補聴器を何回もいじり、さも「補聴器の不調で先生の言っていることが理解できないのかも」という行動を取ったこともあるらしい。
こうしたチックの症状に気付いた担任の先生が「これはまずい」と思ってくれた。
(旧)気管切開孔に関してはトラ本人が「変な感じがするからいちど耳鼻科で診てもらいたい」と訴えてきたので、そこで何でもないと分かれば状態が変わるかもしれないし本当に違和感があって首を捻っているのかもしれない。
とにかく、担任の先生が責任を感じてしまっていたので先生のせいではないと伝えておいた。
実際、先生は一生懸命やってきてくれた。
どうしたらトラが楽しめるか、理解できるか、分かりやすいか。
ようやく支援級相当のクラスへ
そうして息子トラは、ようやく念願の支援級クラスへ移動できることになった。
移動するといっても中学を目処にだ。
なぜなら記憶力抜群のトラ、支援級移動に必要となる「療育手帳」取得のためのテストを普通にクリアしてしまう可能性があるのだ(と言われた)。
別に療育手帳がなくても支援級に行ければなんでもいい。
夫マスオの稼ぎがいいから身体障害者手帳1級をもってしても福祉系手当が月7,000円しかもらえていないのだ。
療育手帳をゲットして何かしら手当を~などと期待もしていないしもはや望んでもいない。
ただ支援級に行ければなんでもいいのだ。
だから、恐らく確実に手帳を取れるであろう中学に上がるタイミングで申請をしてみようという話になった。
じゃあそれまではどうするかと言うと、算数など普通級相当のカリキュラム・スピードでついていけている科目は今まで通りすすめ、理科社会については興味がありそうで簡単な内容を遊びの中に取り入れるという特別内容で進めてくれることに。
身体もスペシャルエディションだが、学校での教育内容も超スペシャルエディションである。
恵まれすぎていて涙がでる。
本当にありがたい。
「トラちゃん、今までよく頑張ったね。一生懸命でえらかったね。ママも怖かったね。これからは、もっともっと楽しく過ごそうね。」
ようやくトラ本人に伝えられた。
とても安心した嬉しそうなトラだったし、変わらず「分からないところはママと一緒に解く。ママとやればできる。」と言ってドリルを開いている。
一応断っておくが、我が家は全くモンスターペアレンツではないしブラックファミリーでもない。
学校側に文句や意見を言ったことはほぼない。
「学校側から毎年度末に返金される教材費の振込手数料800円、家庭側持ちっておかしくないですか?高すぎるんですけど。」
あとは、
「PTAってなんで無償なんですか?先生たちは給料もらえるのに。しかもムダが多くないですか?」
このくらいだ。